フロントフォークOH
スーパーDio、スーパーDio-SR、スーパーDio-ZX(初期型VRサスモデル)、Dioバハ共通
・ブレーキするとすぐにフルボトムする。
・ギャップ通過での振動がすごい。
これはDioのノーマルフロントフォークで陥りやすい症状です。
やはり年式的にも構造的にも仕方のないことなんです…。
でも…ダメだとあきらめていませんか?
簡単な作業で改善する可能性は秘めていることを忘れてはいけません。
そこで何かの役立てばノーマルフォークのOH工程を解説していきたいと思います。
丁度いい素材がありましたのでね
ちなみにスーパーDio−ZXやSRに採用されているVRサスでもバネレートなどの違いはありますが、構造はまったく同じですから方法は同じなんです。
ちょっとやってみたくなってきました?
じゃサービスで後半にはちょっとした裏技も紹介しましょうか…
さて用意するものですが”ありません”。思い立ってOHしたくらいですからね。
ただ、グリスとパーツクリーナー、スナップリングを外すための工具は必要になってきます。
あと強いて言えばダストシールですかね。
オイルが入っているわけじゃありませんので、構造が単純ですし、オイル漏れなんてものもありませんから、自分は再利用しちゃいますけど、欠け、割れ、ヒビ、あと弾力性などのチェックはしておいてください。
素人目でもダメだろって思えるダストシールは完全にダメになってますよ。

さて、最初の画像に戻ります。
オイル漏れに見えるのは、実はインナーから少しずつ垂れてきたグリスにホコリが付着したものなんです。
最初に解説したように、ノーマルDioのサスはオイルダンパーではありませんからね。
ただこの症状、長期乗りっぱなしにしていると誰でも出てくる症状で、例に漏れず自分のものもそんな感じです。
で、早速作業を進めていきましょう。
まず取り外したFフォークのダストシールを外すのですが、精密ドライバーのマイナスなど細くて平らなものを境目の部分から押し込んで外します。
守って欲しいことは絶対に力まかせにしないことと、シールを外そうと持ち上げる方向に力を入れないことです。
マイナスを入れる→ 隙間ができていないようでも次の場所に移る→ マイナスを入れるといった感じですね。
ぐるっと一周もしない間にシールは取れていると思います。

ダストシールが外れたら中は錆やらホコリやらグリスやらでドッロドロになっています。
自分のは粘土のようなものが体積していましたが…ある意味それが普通ですので、つまようじのようなもので掻きだし、残った部分をパーツクリーナーで吹き飛ばしてください。

綺麗になったら画像3のようにスナップリングが見えてきます。
スナップリングは専用の工具で外します。

最近ではホームセンターでも買えますし、何かとないと不便な工具ですから買い揃えておいてくださいね。
リングが外れるとインナーチューブを外すことができます。

この画像にボトムケースがかぶさっている、そんな単純構造です。

画像の砲弾型のゴムはストッパーラバー。
インナーチューブの底の樹脂の部分がボトムしていってこれに当たるようにできているんです。
フルボトム時の衝撃を緩和させる役目を果たすパーツなのですが、AF18、27、34ともにFフォークのヘタリが早いというのが油圧サスでないDioの欠点でして…
スプリングがあまり機能せずにこのストッパーラバーがサス代わりになっているようなことが多いです…。
ラバーストッパー上部がグリスでベタベタになっていないことがそれを物語っていますね。

インナーチューブの底はこんな感じです。
ストッパーラバーが当たっている部分だけグリスが薄く綺麗な状態なんです。
スプリング砲弾型のゴムの先端が当たるといった構造ですから、ここまで当たっているということは当たっているというより、かなり押しつぶしているといった状態なんです。
ただ、異常かといわれると案外ギャップの上を通過するくらいでストッパーラバーはかなり押しつぶしてしまうんですよ。もともとフルボトムしやすいんですよね。
で、サスがヘタってくるとそれが顕著にでてしまうということです……

画像がボトムケース内部です。
自分でびっくりするくらい綺麗でした(笑)。これでもです。
本来?ここが錆さびになって、それがグリスと混じって粘土状になりインナーチューブの動きを妨げてしまうんです。
雑巾で余分なグリスをふき取ったらパーツクリーナーを内部に吹きかけます。
もったいないですが少し多めにですね。

う〜〜〜ん…
さっきから写真の隅に変なものが写ってすみません。。
カウンタックやらジ・Oの足やら、岩おこしやら、歯磨き粉やら…
まぁ気にしないようにしてもらって話を進めますね。
ボトムケースをパーツクリーナーで浸したらインナーチューブを差込み上下に何度もストロークさせると汚れが浮いてきます。


ストロークさせていると、インナーチューブの内側を空気の通る音がすると思うんですけど、そのわけは下画像にある4つの穴なんです。

グリスに浸っているくらいでしたら圧縮された空気が勝るので問題はないのですが、ここに錆が入っていると簡単に詰まってしまうんですよ。
これもスムーズなストロークの妨げになっているんです。
実際詰まってしまっていることが多いのでチェックしてみてくださいね。
インナーチューブ上部のキャップを外して上から水を流してみて4つの穴が綺麗に通っているかチェックしたらいいんです。
でも、水でチェックした場合は綺麗にふき取り、乾かさないとこれもまた錆の原因になるので注意ですね。

綺麗になったボトムケース内部
20年前のフォークと考えると、かなり上質なもの(笑)
奥にある段差はストッパーラバーの底になる部分とスプリングの底になる部分との段差ですね。(ここちょっと覚えておいてください)
普通ここまで綺麗にならないで苦労するんです…
ボトムケースはワイヤーブラシの柄に割り箸などテープで固定して磨いてます。
インナーチューブはコンパウンドで磨きますけど、オイルダンパーではないので錆がオイルシール痛めてオイル漏れをおこすこともなければ、この構造を見ての通り、実際ボトムケース内でスライドしている部分はインナーチューブの先にあるプラスチック部分ですので、そこそこ程度でいいんです。
まぁ完全に綺麗になると、ゴミ防止についているダストシールは痛めないですけど、そもそもダストシールは絶妙なクリアランスで成り立っているものではありませんからね。
ちなみに、このインナーにはまっている樹脂の部分、大きなバイクですとスライドメタルにあたり、テフロン加工の部分が磨耗していれば交換するのですが、Dioのこの樹脂部分は単品で交換はできません。。
インナーASSY扱いです。。。
インナー、ボトムと綺麗になりましたら、残りの部品も綺麗にします。
画像がフロントフォークを構成する全ての部品。

素晴らしく……単純構造なんです…。
それをグリスアップしていきます。

水洗いなどをされている方は乾かしてからグリスアップですね。
グリスアップが終わりましたらもともと入っていた通りに組み込むのですが… (画像の順番で)
それは”ちょっと待った”なんです。
Dioのノーマルサスはすごくヘタリ易いんです。
疑う余地なくヘタっていると思っておいていいでしょう…。
そこでイニシャルをかけてやりたいんですけど、一般的には大きいワッシャーを何枚挟むかでイニシャルをかけていきますよね。
でも、自分それに抵抗があるんです。
ワッシャーが外径、内径ともスプリングと同じというのなら問題はなさそうんですが、同じでない場合は、オイルダンパーの場合はオイルの動きの妨げになるでしょうし、オイルがないDioのようなサスでもインナーチューブさっきぽの空気の穴を塞いでしまうんです。
大きいバイクの場合は純正で使われているワッシャーがスプリングと大きさをあわせてあるので、その純正ワッシャーの数を増やす方法をとるのですが、Dioにはもともとワッシャーなど入ってませんので出来ません。
上が無理なら下にという発想で、スプリングとインナーチューブ底の間にワッシャーを挟むのではなく、ボトムケースの底にワッシャーを入れるという方法も考えられるかもしれませんが、前に述べたようにボトムケースの底は平らではないんですよ。

ストッパーラバーの底になる部分とスプリングの底になる部分が違うということなんです。
ボトムケースに収まっている状態のイメージ
そんな底にワッシャーを入れてしまうとスプリングよりも奥入るはずのストッパーラバーの底をスプリングの底と同じ位置まで上げてしまうことになるんです。
これではストローク量が減少してしまいます。
ボトムの底にワッシャーを入れてストッパーラバーを何センチか切る。
そんな方法もありますが、もっといい方法はあるんです。

これなんだかわかりますか?
正解はDioの使用済みエキパイガスケット。
お手軽じゃないですかね……
自分の部屋にはゴロゴロしてますが…
このエキパイガスケット、スプリングの外径、内径にもピッタシなんですよね。


画像の通りストッパーラバーの妨げにもなりません。

つぶれ具合で厚みが変わる可能性はありますがmm単位でズレてしまうことはまずないですので問題はないです。
それにフロントフォークは2本1組、左右独立して動くことがないので自然とバランスはとってくれるんです。
実際片側1本だけ油圧だったり、片方に伸び減衰だけが、片方に圧減衰だけがある車種もあるくらいですからね。
ストッパーラバーを短くすればストロークは増える。
ワッシャーを入れればバネレートは上がる。
これでセッティングをしていくわけですが、デメリットがあることも把握しておいてください。
ストッパーラバーを切るとフルボトムでタイヤと車体が干渉することもあるでしょうし、フルボトムしたときの衝撃吸収力が弱くなります。
それとフルボトムしにくくはなりますが、フルボトムしたときは以前よりもFフォークが沈んでいますので事実上のキャスターは以前より立っていることになります。
もともとホイールベースの短い原付スクーターですから特性の現れは顕著ですね。
まぁメリットともいえるかもしれませんが。
ワッシャーを入れるとサスが堅くなってギャップで跳ねたり、振動が増えたりはします。
で、話を戻しますね。
今度はフォークの組み付けです。
まぁ…元に入っていた通りに入れていけばいいってな感じではあるんですけど、上下がある部品があります。
コンプレッションスプリングはピッチが広いほうが下。
リバウンドスプリングを抑えている樹脂のカラーは溝のあるほうがが上です。

(画像で上に見えているほうです)
これはスナップリングをはめ込むときにプライヤーの先がリングの穴の奥まで入るように彫られているものなんです。
ですのでリングにあいてる穴と、この溝を合わせてから画像3のようにプライヤーでリングを挟みながら、インナーチューブにテンションをかけ、ボトムケースにはめ込む溝まで押し入れます。

カチっと入ればOK。念のために精密ドライバーなどで押してやって、ちゃんとはまっているか確認してくださいね。
最後にダストシールをはめ込めば終了。
ドライバーのマイナスをボトムケースに対して水平に当てていく感じでOKです。
で、完成

いや〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
20年物とは思えないくらい綺麗に仕上がって自分も大満足です(笑)
手でボトムしてみてインナーチューブ上部のキャップから空気が漏れるようなクシュクシュという音がしていましたら完璧な仕上がりですね。
とまぁこんな感じです。
ただ、これってうまくOHできた例ですよね。
やはり発売からの年数が年数ですから、OH程度ではどうにもならないものもあるんです…
そんなおぞましいものをどうぞ…


はははは・・・・
一生懸命磨いたんですけどこれが限界。
ちなみにボトムケースにスプリングが錆びて固着して外すだけでも数時間かかりましたよ。
ここまでくるとスプリングの強度はかなり落ちてます。
指3本でフルボトムさせられるくらいに…。
オイルで満たされていないスプリングはとても錆びやすく、内部に水分が入ってしまうとサビサビになるんですよね。。。
そしてグリスは内部に侵入したホコリと錆と混ざり合って油分を失い、内部の錆はどんどん進行していくっと…
これがノーマルフォークのヘタリ易さの原因の1つだったりもするんです。
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