十津川モンキー事件 伏見〜谷瀬のつり橋
朝8時伏見のコンビニに集合。
お兄さんも軍曹さんもパンパンになったリュックを持参しており、今日はどこの山を登るのだったかとしばらく悩んでみたが、「あわよくば本宮大社の階段を登ろうとしているのではないか・・・」そんな結論にいたる。
お兄さんに「中に何が入っているのか」と尋ねるとカッパと水筒と上着とのこと。軍曹さんも打ち合わせたように一緒。
「今日って雨でしたっけ?」
今日走るルートの中で、R169大台ケ原の麓の天気が読めないということは、紀伊山地を好むライダーには周知の事実だと思し、自分もR169を走るうえで、ここにあたっては局地的な雨には打たれても仕方がないと思っている場所だ。
しかしそんなことを知りながらも、敢えてすっとぼけてみたのだが、「今日は夜から雨だよ?夜から降水確率20%だよ?」と当然のごとく言われしまい、またもや悩む。
「20%って雨という意味なのだろうか・・・」
そして最後の追い打ちに「雨で濡れたら風邪ひくよ?」
うっ・・・、可愛い女の子が他人への気遣いとして使うセリフなら最高なのだが、雨どころか常に汗で濡れてる自分にその発想はなかった・・・。
というかむしろ「メットの中は今日も大雨だったぜ〜」って言わなきゃならぬ立場だとすら考えてしまってた・・・。
「汗で濡れたら風邪ひくよ?」
いや、ギャグとしてもこれは言えぬ。言ってはならぬ・・・。アラフォーメタボ3人組ツーリング。微妙なお年頃・・・。
そして気になる存在の”水筒”。
メットインのある原付ツーリングでも水筒を持参してるような姿はこれまで見たことがないし、お兄さんがお茶をわざわざ沸かす姿など想像がつかない。
10ヶ月ぶりのツーリングということで母親が持たせた・・・というのは確率的に高いが、嫌な予感もする。
お兄さんが母親にお茶を用意しておくよう指示をしたのではと・・・。
「まさか本宮大社に登ろうとしてないでしょうね・・・?」ストレートに聞いてみた。
「疲れきって一泊ツーリングになるかもしれないね〜ふふふ」
また毎回のごとく遠まわしな返事・・・ったくなんなのだこの笑いは・・・。
これは正直油断してはならない・・・。
無論、去年の白崎海岸ツーリングと同様、お兄さんはバイクを降りて”歩く”という行為はできない人。それは本人も自覚している・・・。(平地は除く)
(↑去年 和歌山を走ったとき 生石高原では高原を見ることなく売店でギブアップ、白崎海岸では奥の階段に登らなかった)
そもそもお兄さんは今日は駆け足ツーリングだという自覚はあるのだろうか。
念のため400キロオーバーくらいだとは伝えてあるが、彼にとっては聖地(TVで見たとこ)であるから、本宮大社に着いたときは警戒しておかなければならない・・・。
そんなやり取りがありつつR24を南下し、いよいよツーリングは開始となるのである。
そうそう・・・
今回は京奈和自動車道の無料区間を3ヶ所ほど走る。
軍曹さんが高速走行が苦手なためか、お兄さんが自分に対して「ネズミもしてそうだから飛ばすなよ」的な感じで釘を差してきたのであるが、自分は直線を飛ばす人間ではないので「前の車についていけば前が捕まります。」と、まぁあくまでも”流れには乗りますよ”という意味を含んだいつもの返答をしていた訳だが・・・
・・・・・・
あんた(お兄さん)やん!!
郡山〜柏原区間の京奈和に上がった瞬間、さっさとミラーから消えちまった奴は・・・
自分は・・・上がったとき前にいたワゴンに、下りるときまで付いて走っていただけなのだが・・・
その失速ぶりに軍曹さんすら「何かあったん?」と聞き
その返事が「入ったとたんゼブラゾーンを見たら目が回った」という予想も想像も理解もできない返事。
笑うのを通り過ぎて困惑させられるのは、軍曹さんよりも毎度のお兄さんだったのである・・・。
五條からいよいよR168へ。
連休せいで車が多いのは自分にとっては残念だが、しょっぱなからペースが速いと二人の心が折れるのが見えていたので安堵感はあったのだが・・・
遅すぎる車のペースに自分の心は早々に折れてしまった・・・。
多いというか・・・正しくは連なっているから絶対に抜けないのだ。
内心は焦る一方である。
このままこのチンタラ大名行列に紛れたまま天辻峠に入ってしまうのではないかと・・・
「だ〜めだこりゃ。」
天辻峠の登りに差し掛かってしまったのでもう無理。抜ける直線がないのだ。
上り区間はほぼ終わってしまうが、途中にある登坂車線まで我慢我慢と考えていたところ、自分たちが紛れている車列を、横からバシュっとツナギ姿の6Rが抜いていった。
「わっちゃぁ・・・。」
この峠には走り屋がいるのだ。いわゆるスポットなのである。
山に走りにいかないため、普段そういう人達を見る機会がない二人。
リアルな走り屋を見てしまっては萎縮してしまうのではないか・・・。
十津川=走り屋!こんな構図ができあがっては、十津川=危ないところ!近づいては行けないところ!いつものようにこうなってしまうではないか・・・。
そうこうしている間に登坂車線。予想通り大名行列は誰一人として登坂に移る気配はなし。
すかさずクリアな登坂車線へ。後ろ二人も続いてくれたか?とミラーを見ると、どこからやってきたかGSX-R1000がすごい勢いで追いついてきた。
自分は二人が登坂へ入ってくれるのを確認するまで加速できないためR1000に抜いてくれのサインを出したのだが、なぜか追い越していかないR1000。
そして二人が登坂車線にはまだ入ってこない。
ずっとこの30〜40キロで走る車列に紛れてるつもりなのか・・・?
すでに自分に対して「飛ばさないよ」アピールをはじめているのか?!?(彼らの飛ばすは制限速度を越えること)
もう車線を変えた手前、こちらも加速していくしかないのである。
悲しいかな自分みたいな下手くそでも背負ってしまうSS乗りであるがための宿命”速いものの邪魔はしてはないけないということ。”
そんな訳で早々に隊列は分断された。
またもや一人と二人のいつものツーリング・・・・。
しかもあと1台抜けばフリーというところで登坂車線が終わり、車列を抜け出せないわ、中途ハンパに隊列は分断するわのダブルパンチ。
そして自分達を引き裂いたR1000はトンネル手前でUターンしていった・・・。
まぁまだワインディングは続くから一人で走るのがちょうどいいとその1台をパス。
フリーになったと思いきや、すぐさま前に1台のハーレー。
カーブが超絶遅いのにラインはいっぱいまで使い、さらに加速だけは頑張るハーレー、一番関わりたくないタイプ・・・。
ハーレーの加速よりもさらに加速させれば前に出ることは容易いこと。
下手の自覚はあっても、下手の自覚がないハーレーよりはマシな現実。
しかしそういう人種を抜くと角が立つから質が悪い。
譲り合えたらお互いが平和なのにね・・・、またもや自分を殺すしかなかった。
道の駅大塔を通りすぎ、r53との合流の丁字路を右折してすぐ、前に現れたのが家族でツーリングをしているであろう女性のマジェスティSと子供とタンデムする男性のシグナスX。
なんて微笑ましく、羨ましい構図。
やはりこの地は危険で近寄ってはならない地ではなかった。自分の言う通りパラダイスなのである。この構図を見てお兄さんも心を改めるに違いないそんな事を思った。
子供が見ている以上はライダーたるものジェントルで行かねばならない。
ほんのちょっぴりマフラーのうるさい6Fに負い目を感じつつも、無理なくゆっくりツーリング家族を抜いていく。
対向からも数台で原付ツーリングをしているグループが走ってくる。
アメリカンの集団もいる。
単独SSはもちろんいる。
ビギナーっぽい250ccネオスタンダード(Ninja250・CBR250R)もいる。
そうそうこの雰囲気。バイクパラダイス。
「景色が良く、走っていて気持ちの良いところであれば、どんなバイクであれ走りに来る。これを見ればお兄さんですら悔い改めるに違いない」
そんなことを考えてしまうと、自分が傷つかないようにと”これは期待だ”と否定したくなる。
雰囲気が掴めるかどうかは、周りを見る余裕があっての話だからである・・・。
「走るのにいっぱいいっぱいで景色は見てない。」
またいつものこれを言われると自分の高揚した気分が谷ぞこへ突き落とされてしまうのだ。
後で落胆するより、先に期待するのをやめてしまう。
なんか自己防衛するようになってしまったな・・・なははは・・・
とりあえず後ろ二人のことを考えるのはやめて、自分が楽しんでみる。
道が狭いと言っても基本は2車線。そこそこには抜きどころはある。
クォーー・ウォーン・クゥゥーーォォオー
普段であれば排気音がうるさくならないよう、回転を控えめにと気を使っているが、こういったところを走らせるととても気持ちがいい。
そして姿勢がキツイからSSなんていいことなしと思いかけている自分も、こういうシチュエーションがあるから結局SSはやめられないと思うのだ。
谷瀬のつり橋への入口まで来たので二人が来るのを待つ。
が・・・来ない(涙)
これまで抜いてきたアメリカン集団も、ソロのバイクも、原付家族も次々とやってきた・・・
「勢い良く抜いて行ったくせにどうしたんだ?」そんなことを言いたげな視線をこちらへ送りつつ彼らは吊り橋へ向かっていく。
それに対して目を合わすこともできず、バイクが来る方向を見つめる自分。
結局正解は・・・何があろうとお兄さん達のペースに合わせてあげなきゃいけなかったということなんだろうか・・・。
「なんで来ないだ・・・」
r53との合流の丁字路で二人が道を間違えないよう、後ろが追いつくのを1度は確認をしている。
再スタート後、最初に現れたのが原付家族であったことを考えると、その後ろからやってきてもいいはずなのに・・・。
いきなり焦ってしまう。
今日は日差しが強く、止まっていると汗ばんでくる陽気なのだが、なんか変な汗もでているような気がする・・・。
なにやらにぎやかなバイク集団が近づいてくる。
モンキーの集団だ。
その後方からやってきた排気量20倍の1000RRとフェーザーGT。
とりあえずは安堵するのだが、これまでの道中、モンキーなど抜いてい&止まっているのも見かけてないことを考えると・・・
「モンキーに抜かれたんですか!?」
声を出さずにいられなかった・・・。
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