伝説のツーリング  十津川・熊野ツーリング(2014年9月16日)

参加者:お兄さん(CBR1000RR)、Kさん(FZ-1フェーザーGT)、自分(CBR600F4i) 


汗で濡れたら風邪ひくよ。 道の駅十津川〜道の駅ほんぐう


道の駅入口に立ち、二人を待っていると、軍曹さんを連れたお兄さんが勢い良く通り過ぎてしまった。 後ろにいた軍曹さんはこちらに気づき道の駅に入ってくるが、しばらく入口にいてもお兄さんが戻って来ないので、足湯に手をつけながらのんびりと待つことにした。

しばらくしてお兄さんが戻ってきた。
「次は熊野へ行くんじゃなかったけ?」
熊野の前に野猿へ立ち寄るので隊列を整えておきたい意味もありここを選んでいたのだが、もうお兄さんにとっては吊り橋が終わったので本宮大社へのスイッチが入ってしまっていることは感じることができた。

次はR425を少し入って野猿を目指す。
お兄さん、野猿の知識はあったようで、前日まで面白そうなニュアンスで話をしていたのだが、「次は野猿ですので、しばらくしたらR425へ曲がりますよ」と伝えると、もう高い系、揺れる系は勘弁してほしいみたいなニュアンスの返事が返ってきた。。
そこまで怖かったのか・・・。

道の駅十津川より南のR168はここ10年ほどでかなり道も整備され一般車にも走りやすい直線基調の穏やかな道にかわる。
そのおかげで、この区間は3台揃って穏やかに走ることができた。
車さえ遅くなければ、こうやって気持ち穏やか走っていけるのだ。
車を一瞬で抜くための隙を探しながら走らなくていいし、無駄な減速もしなくていいし、離合待ちに付き合わされることもない。
バイクは走りやすい道ほど飛ばすようなイメージを持たれるが、案外そうでもなく、体で操る乗り物である以上リズムを狂わされたくないだけというのが遅い車を邪魔扱いするライダーの大半を占めているのではないだろうか・・・
根っから無謀な人は道が込んでいたとしても無謀に変わらないのだから・・・。

「譲り合えたらお互いが安全にいけるんだろうな」
絶対速度がゼロに近くなるほど安全と主張するドライバーにこの言葉が届くことはない・・・。

R425との交差点に差し掛かる。
R425と聞けば道に詳しい人であれば胸が踊るか、鳥肌が立つか、なにかしらの反応をもたらすであろう。
そう日本三大酷道として名高く、近畿三大酷道の絶対王者なのである。

数年前も崖下に落ちている車から遺体が発見されるなど、リアルにこういう事件がおこってしまう場所なのであるが、難所として何があるかと言えば、特になにもなく、ただ落ち葉と苔と砂と砂利と落石で荒れまくった細い道がひたすら続くタフな道という印象なのだ。
ガードレールも気休め程度にしかない。落ちたら命に関わる場所にガードレールが必要というのであれば、この道は成り立たない。
そう、酷道とは国交省から半ば見放されているほど、その行程がタフであるほどランクが上がるのである。
ネタだけを求めるならR309行者環林道のほうがよほどいい。

ただそのR425を100〜200mほど入ったところに野猿はある。
絶対王者の貫禄すら見せぬ間にお別れしてしまうのである。
そこは救いでもあり、残念でもあるのだ・・・。

いや、やはり内心は残念なのである。
「和歌山クォリティ」とは驚き慄くための言葉ではなく、その要素も笑って楽しめてこそ使えるようになる言葉なのだから・・・。


野猿に到着したとき念のために言っておいた・・・
「帰りのことを考えて無理のないとこでやめておいてくださいよ。」
「自分は渡りきったことないですから。」と。

そう人力で進まなければならない野猿は、帰りの体力のことを考え、行きは腕の筋力の限界の3分の1程度に抑えておくのがスマートな遊び方。
とにかく”帰りがしんどい”これは乗ってみてはじめてわかる現実。
ましてや今日のツーリング行程はまだ半分にも満たないのだから。


しかしお兄さんなんとスタート時の勢いそのままで対岸へ渡りきってしまったのだ。
懸念された高所恐怖症も、このとき微塵も感じられない様子で一生のネタ作りをしてしまったのだ。

だが問題の帰りである。
ワイヤーのたわみのおかげで、最初の半分はスムーズに戻ってくるも、半分を過ぎたあたりで「ひっぱって〜〜」と早々にあきらめてしまったではないか。
「途中で疲れたらサルベージしますよ」なんて安心させていたのが仇となってしまった。
彼はサルベージ前提で対岸まで渡りきってしまっていたのだ。

0.1tを越えるお兄さんを軍曹さんと二人掛りでの救出劇。
ご自慢の上腕二頭筋が火を吹き、自分が乗る前から疲れ果ててしまった・・・。

次は自分の番である。
お兄さんを引っ張ったことで既に疲れてしまっていたが、「こんなに楽だったけな〜」とスイスイ進む。
対岸目前あたりで腕に張りを感じてくるが、まぁ今日は戻してくれる人がいるのだからとそのまま対岸へ。


自分も人の事は言えないのである。

やはり問題は帰りにあった。半分を過ぎたあたりからカゴが重い・・・腕が辛い・・・
その様子を見て「手伝おうか〜?」と声をかけてくれる兄さん。
すぐにバテる、すぐに諦めるの典型おデブな自分は当然のごとくその言葉に甘え、勢いよく戻されていくカゴ。



「おぉぉぉありがたや〜〜」と思っていた直後
「あとは自分で」といきなり突き放される・・・

ちょっと待て・・・
なぜに自分はいつも二人からこういう扱いをされてしまうのだ・・・


そこからは綱引きの動作で両手で引く、綱を持ちかえる、両手で引く、を繰り返してなんとかかんとか帰ってきたが、次があるとたら、やはり対岸まで行くのは避けるべきだと、この考えを強めるのだった。
ふぅ・・・。

で、またもや出てくる問題のこの人、軍曹さん。
実は軍曹さん、休職の理由が仕事で腕の筋を痛めてしい、神経痛まで出てしまったからなのである。
当然ここでの遊びは腕への負荷が高い。
止めるまでもなく自粛するであろうと、帰りムードのお兄さん自分と自分に対し
「無理のないところまで行ってみるわ〜」と笑顔でカゴへ乗ってしまった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


で、二人して呆れ顔で様子を見ていると、軍曹さんまで対岸へ渡ってしまったのである・・・。
もう怪我のことは触れないでおこう・・・。
思い出して痛くなられてはあとがめんどくさすぎる・・・。


軍曹さんを二人してサルベージしたあと、自分だけでなくお兄さんすらこう思っていたに違いない・・・。

自分達3人が遊んでいたせいで一人のライダーは先客がいると帰っていった。
自分達が遊び終わるのを待っていた年配夫婦もいた。
少しでもそのお詫びと、年配夫婦に「帰りは手伝う」と申し出た自分とお兄さん。
二人分引っ張り終えたあとは全身汗だくである。

「汗で濡れたら風邪ひくよ?」とタオル差し出すメンバーなどここにはいない・・・。
いや、風邪をひくなどまったくもって思ってないし、走っていればちょうど涼しくなっていいなくらいに思っているのだが、朝の言葉に無駄に反応してみたかった。

しかしおまけ程度に考えていた野猿にここまで時間を費やしてしまってよかったのだろうか・・・。


野猿の近くの景色

R168はR425以南もさらに道が拡張されている。
いや、むしろ作り直されたといったほうが自然なのかもしれない。
土砂ダムという言葉が全国に知れ渡った豪雨災害からの復旧の姿なのだ。

その中で道の駅ほんぐうは新設されたR168からは外れてしまい、旧道へ回り込まなければならなくなっていたのだが、ここから見る景色を二人には見せておきたいと、そちらへ立ち寄った。



いつ来てもここは穏やかな時間が流れている。
十津川と本宮、つまり奈良と和歌山の県境あたりは相変わらずの目のくらむ高さの深い谷の上を走る豪快なワインディングとなっているのだが、先ほどまでの凄く深い谷と、この穏やかな熊野川の景色とのギャップは最高の癒しであり、R168のハイライトシーンと言っても過言ではない場所だと個人的には思っている。


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